暮らしのコラムVol14「蕎麦職人の挽き語り~美味しい蕎麦の話~」
はじめまして飯南町にある「奥出雲そば処一福本店」の店長根來川(ねごろがわ)です。
僕は安来市出身で幼少期から蕎麦は日常にあり、よく食していました。蕎麦の道に入ったキッカケは、大学生の時、飲食店でアルバイトをし、そこで調理の楽しさに目覚めたことです。
当初は、教員を目指して進学しましたが、卒業後は、進路変更し、「料理人」になるため大阪に出ました。
と言っても若気の至りで何の考えもなく、取り敢えずハローワークに飛び込みました。
そこで偶々、目に入ってきた『和そば』の文字!
この時、既に蕎麦の魅力に取り憑かれていたのかもしれません。
料理人になってからあっという間に8年が経ち、いよいよ本格的に手打ちそばを学びたいなと思っていた矢先に母の病気が発覚し帰郷することを決意しました。
ここでも何の宛ても無かったのですが、親戚の紹介で今の「一福」に入社することとなりました。
出雲そばで有名な一福に入ったことで“蕎麦文化”の様々な違いに驚きの連続でした。
『日本三大そば』(出雲蕎麦、戸隠蕎麦、わんこ蕎麦)にも挙げられるほどの知名度がありながら、出雲そばの代表的な食べ方、「釜揚げそばと割子そば」はあまり知られていないように感じます。
県外出張で様々なイベントに参加した時に痛感しました。昔からそばの食べ方にはさまざまなスタイルがあり、地域によって全く異なる文化が形成されています。
所変われば品変わるではないですが、この地域ではどうやって食べるんだろう?となるのも不思議ではないのかもしれません。まして、主食であるお米には到底敵わないので知られる機会も多くないのは確かです。
それでも出雲そばという名の通り神様のお膝元「出雲大社」という大きな観光地では賑わいとともに名物の食べ物として、全国的にも知られているので少しばかり鼻が高い。
蕎麦の魅力は食べるだけに留まらず、面白おかしな様々な逸話にもあります。例えばお寺の修行の一つに米・麦・粟・黍(きび)・豆の五穀(時代や地域によって多少変わります)を食べない「五穀断ち」というものがあります。
その中に蕎麦が含まれていない理由として、諸説ありますが蕎麦には栄養素が豊富なので、修行中の身体の維持のためというのがもっともらしいのですが。実は穀物の中で一番美味しいのが蕎麦であり、それを知っている修行僧がこれだけは断ちたくない!と、五穀から外したという説が僕の一番のお気に入りです。こういった逸話を聞きながら食す蕎麦も、なかなか乙な楽しみ方ではないでしょうか。
さて、料理の基本として
『こうしたら必ず美味しくなる、という「軸」みたいなものが料理にはあって、きちんとした料理人はそこをはずさない。
基本的にその枠(フレーム)の中で勝負をする。創作料理を作るにしても、枠内からはみ出さないギリギリで頭を絞る。だから必ず美味しくなる。』
と言われるように、
基本的な食べ方・作り方は知って頂きたいのですが、これが正しい食べ方ですと決めつけてしまうのではなく、10人いれば10通りの蕎麦への思いや食べ方、楽しみ方があって良いし、その方が食生活も豊かになると思います。
他にも
「白ネギを箸代わりにそばを食べる文化があるらしい」
「素麺みたいに真っ白なそばがあるんだよ」
「そばの自慢はお里が知れるって何?」
「蕎麦の花って独特なにおいがするらしい」
それ本当なの?へぇ面白いね♪と、食卓でそんな話に花を咲かせていただきたい。
コロナ禍を経験し、おうち時間が増えた方も多いことでしょう。お陰様で弊社が販売している家庭用生そばも売上好調です。(笑)
ですが、おうちで作ろうとしてもなかなか上手くいかないと言う声もチラホラ。。
今日は、おうちでお蕎麦を美味しく食べるための「基本」を教えたいと思います。
~「奥出雲そば処一福本店」店長直伝!
おうちで美味しいお蕎麦を食べるコツ~
1.まず、たっぷりのお湯(最低4リットル)で少量(一人前約120g)のお蕎麦を泳がせる(←ここポイントです)
銭湯を独り占めしているイメージですね(←ここナイス喩えです)どうしても一度に沢山のそばを茹でようとしがちですが、ここはグッと辛抱です。
2.茹で上がりの硬さはお好みもあると思いますが、
目安として温かいそばは2分30秒、冷たいそばは3分。温かい釜揚げそばは特にオススメしたい。
茹で時間になったらざるで掬ってそのまま直接どんぶり鉢に移しそこに茹で汁を入れる。
蕎麦を洗わないんです、これが実に美味い!
栄養も洗い流されていないので、ダイレクトに旨味を感じて頂けるでしょう。
弊社の生そばは製造工程で熱処理を施しておりません。その為、そばの風味が損なわれず美味しさが保たれていますので豊かな味わいと喉ごしがお楽しみ頂けます
人生100年時代となり一生の時間はかなり長くなりました。
だからこそみなさんと蕎麦のことについて、時間をかけてじっくり味わっていけたらと思うのです。
そば屋好きの蕎麦食人としてそば屋そのものの魅力も発信していけたらなと思っています。
行く先々で色んな蕎麦に出会いそこでの人との出会いも楽しみなのです。
細く長く繋がる蕎麦に、人は昔から幸福を願い食してきました。
人の思いを繋げ、人と人とを繋げる
蕎麦のつなぎには人を思う心もあるのではないかと思うのです。
これからもみなさまのもとへ 会心の蕎麦をお届けできるよう
精進して参りますので宜しくお願いします
Writer profile
有限会社一福
- 奥出雲そば処一福本店店長 根來川 淳
- (本社事務所)島根県飯石郡飯南町頓原2322
- TEL(本社) 0854-72-0006
- HP https://www.ippuku.co.jp/
- オンラインストア https://ippukusoba.shop-pro.jp/
- おススメの逸品 奥出雲生そば10人前 https://ippukusoba.shop-pro.jp/?pid=89001247